猫のノミ寄生

 ペットを室内で生活させる家庭の増加にともない、ノミやダニがいる、ということで病院を受診するペットも多くなってきました。ノミも、犬でより一般的にみられるマダニも、寄生するとペットはかゆみなどで不快な思いをするのは皆さんもご存じのとおりです。でも、それだけではないのです!今回は案外大したことはない、と思われがちなノミが猫に引き起こす様々な病気についてご紹介しようと思います。

 最近では事故や病気から守るため、猫を外出させないようにしている飼い主さんがほとんどですが、「猫は外で自由にしているもの」と考えている方もまだまだいらっしゃるようです。このような外出自由の猫たちのほとんどにノミが寄生しており、診察や入院の際に駆虫するということもしばしばです。「ノミがいますよ」と指摘しても大して驚かれない方も多いように感じられます。
では、ノミが猫に寄生することがなぜ良くないのでしょう?

1.かゆみとアレルギー性皮膚炎
 ノミが寄生し、吸血することで猫はかゆみを覚えとても不快な思いをしますが、それがきっかけとなりノミを駆除した後もアレルギー性皮膚炎を起こす場合があります。かゆみや皮膚炎が残ってしまうのは猫にとってもつらいことです。
また、ノミはヒトにもうつるため、皮膚の弱い方や小さな子供さんにも良くありません。

2.寄生虫などの媒介
 ノミは瓜実条虫という寄生虫の卵を体の中にもっているため猫(や犬)がグルーミングなどの際にノミを飲み込んでしまうとこの寄生虫がお腹の中に入ってしまいます。「お尻の周りに動く虫がいる」とか、「便のところに動く米粒大の虫がいる」という相談を受けますがそのほとんどが瓜実条虫です。この寄生虫は猫に大きな害を及ぼすことはないとされていますがまれにヒトにも感染することがあるので駆虫しておいたほうが良いでしょう。
 ノミをみつけるとつぶしたくなってしまうものですが、つぶすと瓜実条虫の卵を散らしてしまいます。ノミをつかまえたら水に流すなどすると良いでしょう。
 さらにもう一つ、ノミが媒介すると考えられる恐ろしい感染症にマイコプラズマ感染症(旧ヘモプラズマ、ヘモバルトネラ)があります。
 マイコプラズマは血液中に入り、赤血球を破壊するため猫の貧血を起こします(猫伝染性貧血)。 とくに猫エイズウイルス(FIV)、猫白血病ウイルス(FeLV)に感染している猫ではこの症状がより激しくなり輸血が必要となったり、亡くなってしまったりすることもあります。このような猫では治療で一時的に症状が治まってもしばらくするとまた貧血をぶり返す場合があり、猫も飼い主さんもそのたびにつらい思いをすることになってしまいます。
 マイコプラズマの感染ルートは未だ不明な点も多いのですが、夏季にノミやダニに感染し、秋頃発症することが多いとされています。

 このようにノミが寄生して良いことは何もありません。外出自由な猫と生活していらっしゃるご家族の方は今すぐ!ノミが猫ちゃんについていないか確認してください。そしてノミがいたら駆虫を、いなくても予防をしてあげてください。ノミの予防・駆虫薬はたくさん種類があります。一般的でお手軽なのは首の後ろにたらす液体状のものですが、より長く効果を持続させたい場合には注射薬もあります。詳しくはかかりつけの動物病院にご相談ください。